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十年分の心の力を取り戻す準備
 十年という時間が流れた。
僕はその時間の速さにただただ驚く。

この十年で僕は家族を持ち、子供を授かった。
日常とは会社に行って仕事をし、休みの日は子供と遊び、たまに家族で出かけたり外食したりすることになっている。それが当たり前の毎日だと感じ、それに少し物足りなさや変化を欲しはじめていた矢先、東日本大震災が日常を襲った。

阪神大震災とは比較にならない非日常が多くの人の人生に影を落とした。
僕もまた、生きていくことについて対峙していた。人の親である以上、子供たちの未来と将来には責任がある。いつどこでどのような事由で人生が終わるかわからない。だからこそ一日一日を懸命に生きていかなければならない。生きていくことは義務なのだ。

年末前に母親が事故で入院し、手術とリハビリを最近まで続けるという大変な事態になった。心配していた予後も順調であり、つい最近ようやく退院して自宅に戻った。車と接触したということを聞くだけで全身がとんでもない緊張感に包まれる。やっぱり何も終わっていないんだと思う。

人生の中でターニングポイントと位置づけた35歳がもうすぐ訪れる。僕の日常は家族の日常でもある。僕一人の判断で変えていくことはできない。しかし、人生は僕の人生でもある。ずっと先延ばしにしていたこともこれ以上は延ばせないところまできている。

昨年の後半は少し自分を見失っていた。欲望に忠実に動いていくことを最優先させ、時間もお金も浪費した。まさに浪費だ。後悔はしていないが何かを得られた訳でもない。あれは多分、一度脱皮をするために必要な時間と行為だったのだ。2004年、春を思い出す。バランスを崩した際、やはり僕は自分の欲望を吐き出すことに注力した。夏が過ぎた頃から確かに僕は変わった。主にそれは仕事のシーンにおいてではあったが、目に見えて変わった。

十年一昔、僕が成し遂げなければならないことは本当は昔からわかっていた。
2004年、僕はこう記している
----------
  僕はこれからの10年間、悩み続ける。 
  ひとつのゴールと決めた35歳まで 
  少しでもあがくことができるだろうか。 
  王道を歩む本物か、覇道に沈む偽者か、 
  自らの真価を問う時代が始まる。 
---------
自分なりに真っすぐに生きてきたつもりだ。
少しはズルいことも覚えたが、根本的なところで誠実さを保ってきたと思っている。
この十年で技術や経験が増え、反射的に答えを出せるようになった。
でもそれじゃ、ここから上がれないし、変われない。いや、戻れない。

戻るのは情熱を強く持って走ろうとしていた2002年の力だ。
悲しみと喜びを培った十年間をそろそろ終わりにしよう。
そして、妹がいなくなったあの日とちゃんと向かい合おう。
心の力をもう一度呼び起こそう。


| S | Diary | 18:31 | - | - |
そしてまた季節は巡る
先週、出張を利用して親の家に行った。
東京に来てから親を訪ねる回数は格段に減った。
物理的な距離の問題だけではない何かが僕の中にあるのかもしれない。

自分が食べるわけでもなく、親の土産というわけでもなく、東京土産の「ごまたまご」を買い、花も持たずに仏壇に供える。

上の妹は知らぬ間に実家を出てしまっていて、僕はその部屋に泊めてもらう。
いろいろと世話を焼いてくれる母親にありがたさと申し訳なさを感じつつ、家に泊めてもらう。

昨年の先の見えないトンネル状態だった頃を思うと、この一年はいろいろな意味で回復に向けて動き出すことができている。次女は1歳になり、ようやく生活の安定感を得たといっていい。妻はたまにキャパシティオーバーになることはあるが以前のような情緒不安定さはなくなってきた。長女も多少の不安定さはあるものの元気に明るく育っている。仕事は順調に進み、家も買うことになった。東京に来て一段下がった人生は再び前進を始めた。

2/19は土曜日。普通の土曜日。次女と車で児童支援センターに遊びにいき、自宅で昼食を食べ、午後は長女と二人で新居を見に行く。夜は家族でお好み焼きを食べながらビールを飲む。どこにでもある日常。かけがえのない幸せな日常。

少しだけあの日のことを考える。いくつものシーンがあまりにも鮮明に思いおこされ、瞬間的に感情のコントロールを失いかける。人生がひっくり返る瞬間の一つだった。

もう長くあの場所には行っていない。
母によると花は手向けられ続けているという。
年々、妹の話をすることが億劫になってくる。
自分の家族にさえもできるだけ話題にしてほしくない。
新しく出会う人たちにはもちろん、旧知の友人らに対してもそうだ。

家族を亡くした経験のある人はたくさんいる。
親友や同級生の中にもいる。
お互いに事情は違えど苦しみと悲しみを背負い続けて生きている。
これは癒されるものではないのだ。背負い続けることなのだ。

そしてまた季節は巡る。来年で10年。
なにも区切れるものはないし、何かが薄まったわけでもない。
僕は僕の人生を走り続け、家族とともに生きていく。
失われた妹の人生を補うことはできない。
だからこそ、恥ずかしくない人生を歩まなければいけない。
気負うばかりではダメで、嫌になることもたくさんある。
それを繰り返していきながらもしっかりと大地を踏みしめ
道を築いていくのだ。

妹は太陽のような人だ。僕は決して自分がなれない太陽を目指し、
人生の奇縁を感じながら今日という日を生きていく。
また、明日という日を信じて今日を生きていく。







| S | Diary | 23:50 | - | - |
悲しみは癒えたか
悲しみは癒えたか。

自問自答を繰り返しても答えはでない。
毎日身が裂かれる思いでもなければ愉快な気持ちでもない。

自分自身の一年を振り返ると飛躍するはずが微妙な停滞時期に入ってしまったことを感じる。
意気揚々と東京に来たのだが、仕事に忙殺され、いろいろな意味を見失っている。
次女が生まれた喜ばしいはずなのに妻の不安定な状態に苦しんでいる。

それでも毎日をそれなりに全力で駆けてきたとは思っている。
あまりうまく伝わらずに僕自身が空回りしているのかもしれないが
いろいろな状況というのは決して好転してはいない。

東京に来たこともあり実家との関係も少し疎遠になった。
妻の不安定さ加減を考えるとその方がいいかもしれないのだが。

予想どおり、今年は現場にも親の家にも行くことができなかった。
もし行けたとしていてもこんな情けない状態では合わせる顔もない。

東京に来て、妹と同学年の後輩らと仕事をする機会が多くなった。
彼らは(自らがそうであったように)果敢に仕事に取り組み、会社への不満をぶつける。
僕は少し中性的な立場で時に彼らを煽り、時に安心させ、ともに仕事を完成させていく。
彼らにはまだまだ大きな可能性がある。僕とはちがった意味で。

もちろん僕にだってまだまだ可能性は多くあるだろう。
でも選択できる道は随分と限られてきた気がする。


世界はあいかわらず変わらぬスピードで回り続ける。
僕もあいかわずエネルギーの多くを仕事に費やしてしまっている。
あのとき、ソルトレイクでオリンピックは行われていたはずだがあまり記憶がない。

妹の顔を思い浮かべてみる。じんわりと涙が浮かんでくる。
両親と上の妹のことを思い浮かべてみる。もう少し優しくしなければと胸が締め付けられる。
自分の家族のことを考える。妻と長女と次女、僕にはわからない。
どちらも大切な家族なのに愛が均等に渡りえない。
僕は今、家族らにうまく気持ちを伝えられない。

誰かに弱い部分を受け止めて欲しいと願うのだが、
誰一人、その思いを叶えてくれる人はいない。

この軽い失望はまさに妹を亡くして自分自身と壮絶に戦っていたあの日、
誰ひとり僕のそばにいてくれなかったあの日の絶望に近い。

会えるものなら、今、妹に会いたい。
あのこの悩みにも今ならうまく答えられるかもしれないし、
僕の悩みも話せるかもしれない。

八年が過ぎた。
悲しみは癒えたか? 癒えるわけがない。



| S | Diary | 22:57 | comments(0) | trackbacks(0) |
 
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